東京都は「2020年までに温室効果ガス排出量を2000年比で25%削減する」との目標を掲げ、国に先んじて2010年度からEU並みのキャップ&トレード型の排出権取引制度を導入する。これはあらかじめ排出枠を定め、排出量がその枠を超える場合は他の事業所から排出権を購入するなどして達成を義務づける制度。二酸化炭素の排出削減を義務づけられる事業所は原油換算で年間1500キロリットル以上のエネルギーを消費する事業所で、対象になるところは約1300ある。
ODR Forum2008でのレポート[The Role of ODR in International Emissions Trading]では、環境変動の原因となる排出ガス規制に伴う取引に対する対応はもう待ったなしの状況となっている。気温上昇、氷の消失ともに想定外の範囲で変動しており、ポスト京都を進めなければいけないし、2012年までの予定を2010年までに早める必要もあるといわれている。また、その膨大な排出量にも関わらず、経済的発展を優先する段階にあるために、制限を受けない中国、インドの関わりは非常に大きい。世界的に、排出権取引を実施していかなければ目標達成は不可能といわれており、Emission Reduction Purchase Agreementを締結し、途上国への開発もこのことを意識して進めるべきである。
そして、これらの契約をかわしていくために、大挙して交渉団が飛行機に乗って移動するのは、「どうよ?」ということで、ODRは必須!ということになってくる。
もう一つ。国際紛争への介入は今後も続いていくし、先進国が企業に委託して進めることも多くなる。企業は効率よく経済的に進めるための選択肢として、現地法人と契約して業務にあたることになる。例えば。
イラクの米軍キャンプ設営を請け負った会社は、米国政府と契約を結ぶ。そこには紛争解決の手段を定義するADRの条項がある。一方、会社は現地労働者の派遣会社とも契約を締結する。もし、もめ事が起こった場合、請け負った米国籍の会社は、ADRを行うため、米国との紛争では米国へ、イラク現地の会社とは、イラクでADRを行う。時間とコストの負担は元請けの企業が一手に担うことになる。たまったものではないだろう。費用負担を公平にするためには、中間地点に移動することになるが、この場合、自分たちのコストはもとより、仲裁人の滞在費や移動費用、日当などを折半で負担することになる上、移動のための時間やその間に他の仕事ができなくなること、あるいは事故のリスクなどを考慮すると、「じゃあ米国で裁判を」としたほうがよくなってしまうかもしれない。そもそも裁判をさけようとADR条項を入れたのにも関わらず。
この場合にもODRはMUSTな選択肢となる。